数ヶ月前から、“突然”と感じた人も多いと思うが、TPPといった言葉が菅首相をはじめ、多くの閣僚から出るようになった。
TPPとは、新語時事辞典によると、
別名:環太平洋経済協定、環太平洋戦略的経済連携協定、環太平洋パートナーシップ、環太平洋パートナーシップ協定、太平洋間戦略経済連携協定、トランス・パシフィック・パートナーシップ
英語:Trans-Pacific Partnership、Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement
2006年にAPEC参加国であるニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4ヵ国が発効させた、貿易自由化を目指す経済的枠組み。工業製品や農産品、金融サービスなどをはじめとする、加盟国間で取引される全品目について関税を原則的に100%撤廃しようというもの。2015年をめどに関税全廃を実現するべく協議が行われている。
2010年11月現在、すでに米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの5ヵ国がTPPへ参加、次いでコロンビアやカナダも参加の意向を表明している。日本はこれまでTPPに対する姿勢を明らかにしていなかったが、2010年10月に開かれた「新成長戦略実現会議」で、菅直人首相がTPPへの参加検討を表明した。しかしながら、TPPが原則として例外を認めない貿易自由化の協定であることから、コメをはじめ国内の農業・漁業は壊滅的な打撃を受けるとして反発する声も上がっている。
農水省は、日本の農業が壊滅的になるといい反対の立場をとり、、経済産業省は、参加しなかった場合の経済的な損失が大きいとして賛成の立場をとっているので、国民としては、非常にわかりにくい話になっている。
昨日、海江田経産相と日本経団連・米倉会長との会談で、推進していくといったことで一致したとして報道発表がなされた。当然、もともと賛成の立場をとる経産省と基本的には、企業の集まりである日本経団連では、立場が同じであり、当然の成り行きである。
実際のところは、どうだろう?打撃を受ける農業において、当然、予想されるように、安い農作物が日本に入ってくれば、一時的に厳しくなるだろう。お米についても、外食産業など、コストを抑えたい立場にいる企業の多くは、海外のお米を使うところも増えることは、容易に想像できる。反面、日本の美味しいお米は、世界的にも輸出できる可能性も出てくる。つまり、短期的には、厳しいが、TPPに取り組むことは、可能性も拡がる話であり、全面的に否定をできないとも言える。今回、GDP世界2位になった中国が含まれていないが、中国は、基本的に保護貿易を取っており、輸出できるのは、リンゴ、なし、お米だけである。片山リンゴが、中国で約2000円で売られていて人気を呼んでいるのことを知っている人も多いだろうが、今後、中国へのTPP参加への交渉力といった面のメリットも考えられる。
最終的には、TPP参加は、菅政権の既成路線になっているような感じもするが、いずれにしても、省益ではなく、国益を考えた上での判断を期待したい。
なぜ、そうしたことを感じるかと言えば、例えば、日本が、何故、カロリーベースで食料自給率を計算しているかということが不自然だと思うからだ。世界的にもカロリーベースを採用しているのは、日本と韓国だけである。物差しが違うのに、各国と比較して日本の食料自給率が低いというのは、小学生でもわかる誤魔化しだ。もちろん、自給率を低くすることにより、関税の圧力その他といった意図があってのことであろう。日本の役人は、そんなにバカではない。但し、農水省がTPPに反対といったことも、補助金その他の予算が多く取れるかどうか?といった利害を感じてしまうのは、カロリーベースで行っている自給率の発表のようなことをしているからである。つまり、以前から指摘されながら、カロリーベースで自給率を発表する必然性が自分自身としては理解できないのである。
日本の農水省も省益ばかりでなく、日本全体や社会全体のことを考えてほしい。しかし、このことは、農水省に限らず、経産省をはじめ他の省においても、同様なことが起きている可能性も否定できない。組織論的には、省が分かれれば、当然、それぞれの組織の視点からモノを見るために、こうしたことが起きうる。しかし、意識して国益といった視点で考えてみることや、企業で行っている省をまたいでの人事異動なども、全体的な判断ができる場をもつことをあわせて考えるべきではないか?と思う。小沢問題ばかりに時間を費やしているようでは、本来、政治家が俯瞰して考えなくてはならない立場にあっても、機能は果たせない。是非、菅首相には、自分の意思決定が、首相を辞めた後も、“自身が後悔しない”といった信念を持って、また、十分に勉強して、他から言われてコロコロ変わることのないリーダーシップを期待したい。
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